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クロス・ストーリー 第1話 ~新たな物語

「……って訳で、俺達は見事、『エルドラド』を壊滅させ、無事に帰還したって訳だ」

 ソファにどかっともたれ掛かる……疲れた。
 幾ら何日にも分けて話したとはいえ、あまりにも長すぎる。
 ま、仕事なら仕方ない……が。
「で、何か質問は?」
「いえ。ありませんよ、ヴルドさん」
 顔に笑顔を貼り付けたまま、俺の真正面に座る依頼人が答える。
 会話中だろうと終始微笑んでいる。ハッキリ言って胡散臭い。
 来ている服は地味なフード付きコートだったりするのだが、如何せん髪の毛が真っ白、更に碧眼だ。目茶苦茶目立つ。
 全く、どうやってここまで来たのやら……なりも細いし、魔法でも使ったのかね?
「それで、次の仕事は?」
「……僕がそんな素振りを見せましたか?」
「俺は少々勘が鋭いんでな」
 声音は意外そうなのだが、表情は全く変わっていない。
 こいつが表情を変えたのは俺が話をしていた時だけ……しかも、スキルを使ってなければ気付かない程の小さな変化しかなかった。
「大体、話を聞きたいだけなら吟遊詩人にでも頼んだ方が安いし面白い。それでも俺達の所に聴きに来たってのは、なんかあるってことだろ」
「本人から直に聴いた方が楽しめそうだから、では駄目でしょうか?」
「駄目だ。つーかそう言った時点で別の用件があるのがバレてんじゃねぇか」
「……それもそうですね」
 フッと笑う白いの(今命名)。
「隠し通せると思ったのですが」
 やれやれと言った感じでポーズをとる。
 しかし、表情は微笑のまま。絶対残念がっていないだろお前。
「結局話す予定でしたし、問題は無いんですけどね」
「じゃあとっとと話せ。依頼人と請負人には信頼関係が大事だからな」
「えぇ。分かっています。ですが」
 俺の背後に視線を飛ばす。
 そこにいたのは……
「……何やってんだ、お前」
 扉の影に隠れるように、赤い髪の少女と言って差し支えない顔が見える。
 いや、隠れてもモロにバレてる。
「ミナにも聞かせた方が良いか?」
「貴方と彼女、二人への依頼ですので」
「了解」
 依頼人に言われちゃ仕方あるまい。
 席を立ち、相変わらず扉に張り付いたガキの所に向かう。
「……」
 が、気付かれない。
 ミナの視線は白いのに固定されている。
「……あ」
 急に唇がニヘラァと歪む。
 な、なんだこいつ。
「何やってんだ、お前は」
「今、笑ってくれた!綺麗だなぁ……」
 顔はこちらに向けないが、俺がいることには気付いているらしい。
 というか、この表情は。
「お前なぁ、ガキの癖に恋患いかよ」
「ガキ言うな!文句でもあんの!?」
 白いのに聞こえない程度の小声でブチ切れるミナ。器用だなお前。
 恋患いは否定しないのがこいつらしいと言えばこいつらしいが。
「忘れてないだろうな?俺達は仕事を請け負う側で、あいつは依頼人だ。仕事が終われば関係は切れる。恐らく会えんぞ」
「分かってるよそんなこと!でも、仕事の間ぐらい良いでしょ!!」
「構わないが、仕事に支障を起こすなよ」
「当たり前です。私は勇者になるんだから!」
 中々の意味不明さを見せてくれた。
 ま、毎回こんな感じだから慣れたけどな。
「で、その依頼人がこっちに来いだとさ」
「え、なんで?」
「お前、顔ばっか見て話を聞いてねーじゃねぇか」
「仕事の商談はヴルドの役割でしょ!」
 そら、お前に任せたら収入が激減、どころか経費すら貰えずにただ働きばかりになりそうだからな。
「とにかく、こっちに来い」
「分かった」



――――――――――

「んで、連れて来たぞ」
 横で座ってるのはガチガチだけどな。
 こんなに分かりやすい奴もそうそういまい。勇者ってのは単純な奴が多いと聞くが、そういう点ではミナにも素質はあるのかもしれない。
「どうも」
 軽く会釈した白いのに蕩けそうな顔をするミナ。純粋過ぎてこっちが泣けてくる。
「では、貴方がた……『ツイン・ブレイド』に仕事の依頼があります」
 『ツイン・ブレイド』ってのは俺とミナが立てた何でも屋みたいなヤツだ。
 自慢じゃないが俺の名はここではそこそこ知られてるし、先の大暴れでミナも一緒に有名になった。
 早い話、一人ずつでも仕事は舞い込んで来そうなものだし、実際に少しではあるが訪れる人は増えてきている。
 なのに何故、俺とミナが未だに一緒にいるかと言えば、お祭り騒ぎが収まってすぐにミナが
「もう二人で勇者コンビ結成しちゃおうよ」
「お前が勇者になるのは勝手だが俺を巻き込むな」
「ヴルドだって勇者になりたかったんでしょ」
「昔の話だろ。今は興味ないな」
「じゃあ、コンビ名は『ツイン・ブレイド』ね」
「人の話を聞け!というか、勇者になるのにコンビを組む必要がどこにある!?」
「だってヴルドのご飯って美味しいし」
 こんな感じで論点をズラされまくれ、最終的に頭の痛くなったこちらが折れて今に至る。
 また、最初は「家賃その他は自分で払える」とか吐かしていたミナだが、『ツイン・ブレイド』を設立してからは1グランも出そうとしない。
 一度、催促してみたら「相棒に金を払う義理無いし」的なことを言われ、諦めた。
 こう考えると、最初に会った頃の方がまだ可愛いげがあったのかもしれない。
「依頼って、私とヴルドの両方に?」
「はい。しかも、かなり時間がかかるかと」
「どんなの?」
「二人はまだ覚えてますよね?『エルドラド』」
「当然だ」「そりゃね」
 さっきまで延々話していた内容だからな。
 話していたのは俺だけだったのでミナへの質問だったんだろうが。
「では、その跡地で何かが行われている、という噂は?」
「ハァ?」「なにそれ?」
 あそこはもう跡形もなく消滅している筈だ。『エルドラド』のボス、グレガルが自爆したことで拠点があった場所にはクレーターしか残っていない。
「馬鹿な物拾いでもいるんじゃねーのか」
「瓦礫の山になっていると思いますが」
「馬鹿だから瓦礫が宝に見えるんだろ」
「そんなことなら噂になりませんし、僕もここには来ません」
「だろうな」
 しかし、今更何がある?確かに金だけは溜め込んでいた組織だが、全部纏めて木っ端微塵なら探しても意味が無いだろうに。
 それとも、また別の何かが?何だ?
「そこで、お二人に何があるのか。何が起こっているのか。それを調べて頂きたいのです」
「『エルドラド』跡地を調査しろ、ってことか」
「そうなりますね」
「ふん」
 興味が無い、と言えば嘘だろう。
 なにせ、自分達の手で叩き潰した組織の後で何かが行われているのだ。
 もし、残党がいて、そいつらが復活をした場合、今度こそ俺とミナはこの街から逃げ出す必要がありそうだ。
 いや、ミナなら一人でも突っ掛かって行きそうだな。となると、俺も戦う羽目になる。勿論、そんなのはゴメンである。
 ならば、完全に復活する前に根絶させるのが最良、とはいかなくても上策か。
「報酬は?」
「言い値で」
「……ハァ?」
「そちら側で好きに決めて下さい。きっとお支払い出来ます」
 こいつ、何者だ?
 依頼内容もそうだが、こんな街で言い値で払わせたらとんでもないことになるってのに。
 あまり吹っ掛けると後々の評判も悪くなるからそれなりにするつもりではあるが、そんな金持ちなら評判になりそうなものだ。
 恰好からして街の外から来た奴だとは思う。だが、『エルドラド』壊滅が大事件なのはあくまでもこの街の中だけの話。他の街では噂にすらなりにくい筈だ。
「取り合えず、調査費込みの前金としてお受け取り下さい」
 スッと差し出された袋をミナが受け取る。
「重っ!?」
 手渡しで袋を受け取る……確かに重い。
 中を開けてみると、目も眩まんばかりのグランがぎっしり詰まっていた。七桁は堅い。下手すりゃ500を越えている。
「これで、前金か」
「ええ。仕事が無事終了しましたら更にお支払いしますよ。それと、万が一失敗したり、何の成果も上げられなくてもお返しする必要はありません。今、この瞬間からその袋の中身は全て貴方たちの物です」
「気前良いな」
 良すぎて怖い。
 例えば、この依頼と金は俺達二人を貶しめる為の罠じゃないか――そんな風に勘繰ってみたくもなる。
 既に『エルドラド』は復活していて、俺達に報復する為におびき寄せる餌がこれなんじゃないか。そう考えることも出来そうだ。
 が、俺の口から出る言葉は
「良いぜ。『エルドラド』跡地の調査、請け負ってやる」
 了承。
 はっきり言うと、罠だろうが何だろうが、このグランは魅力的過ぎる。
 罠だった場合、見事に釣られた形となるが、その時はその時だ。
 ……ここで断ったらミナに切れられそうというのもあるが。
「ありがとうございます」
 一礼する白いの。慇懃な奴。
「あ、そうでした」
 なんだかわざとらしい感じで思い出した(フリか?)。
「まだ何かあんのか?」
「はい」
 コホンと咳ばらい。
「実は、今回の仕事にはもう二人にも参加してもらいます」
「私とヴルドだけじゃなくて、他に二人?」
「そうです」
 益々怪しくなってきた。
 今更前言撤回する訳にはいかないし、する気も無いが……そのもう二人とやらが始末屋だったりしたら正直、辛い。
「もう二・三日でこちらに着くかと思われます」
「この街の人間じゃないのか?」
「ええ。僕が出向いて話はつけています」
 この街の者じゃない……なら、始末屋の線は薄いか?
 流れの暗殺者、とかだったら終わりだが。
「しばらくここで寝泊まりすると思いますので宜しくお願いします」
「ここにかよ!?」
「それが一番かと思いましたので。仕事中の生活費は彼等と貴方達の分全てお支払いします。勿論仕事料と別で」
 金の心配は無くなったが、まさか人を迎え入れることになるとは。
 空き部屋には余裕があるし、ミナが定期的に全ての部屋を掃除しているから住まわせることは出来るが……突然過ぎて心の準備が出来そうにない。
「どんな奴らだ?」
「二人の男女ですよ。貴方達のような」
 俺達のような男女がどういうものか分からないが、男がロリコンだったら全力でぶっ飛ばすと心に誓った。
 ミナが純粋過ぎる上、周りに『可愛い女の子を愛でる会』とかいう変態集団がある為に、ロリコンは俺の天敵になっている。
「それでは、僕は失礼させて貰います」
「あ、送りますか」
「いえ、大丈夫ですよ」
 微笑したままミナの申し出を辞退する。
 誰か護衛でも付けているのだろうか。
「では、宜しくお願いしますね。『ツイン・ブレイド』」
 そして、依頼主は戸を閉めた。
 ……さて、探りを入れるのは今からでも早過ぎとは言えないよな?



~~~~~~~~~~

 ヴルドとミナが依頼を受けた頃、ある船上で二人の男女がそこに向かっていた。
男の手に握られていたのは一枚の手紙。そして彼の想いは。

次回『クロス・ストーリー 第二話 ―もう二人は』

「オェエェエェエェ!」



 業務連絡:今回から次回予告がマイルドになりますよん。本編並の長さがある次回予告は流石にない。うん。
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No title

『可愛い女の子を愛でる会』・・・。
さて、本部はどこか・・・ぎゃぁあぁあぁあぁあぁ!!?鳥が、鳥がぁーーー!!!

No title

>翠晴さん
あぁ……彼らはあとがきの辺りをうろついていたら勝手に出てきますよ……(無茶言うな)
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