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探偵Dと始まりの魔導書 第2章

 フォルを追い、僕が入っていったのは厨房。
「ここではまだ何も見つかってなかった筈です。探せば何か出てくるかも」
 また元の口調に戻ったフォルに促され、僕も周りを軽く見渡してみる。
 かなり大きな厨房だ。魔術師ともう1人の女性だけで住んでいたとすれば豪勢すぎる。恐らくは他にも人がいたのだろう。住んでいなかったとしても、客人を招くようなことはあったのかもしれない。
 長年使われていなかったのに中はシンクまでピカピカ、埃1つ見当たらない。屋敷全体に状態保存系の魔法がかかっているのだろう。
「全く、お金持ちが羨ましいわ。広間だけで無くこんな所までグランを注ぎ込んでいるようですし」
 フォルの呟きに内心で大きく肯定しつつ、更に詳しく調べてみようと棚を開けてみる。
 しかし、いくら開けてみても中に入っているのは調理道具や容器ばかり。ラブレターらしきものは中々見つからない。
「フフフ、貴方には物探しの才能が無いようね」
 見下した言い方が癪に触ったが、彼女は彼女で厚底鍋の中身を1つ1つ調べて行くというお粗末な捜査を続けていた。いくらなんでも、ラブレターを鍋の中に入れるような人間は早々いないと思うのだが。
「むぅ、中々見つからないものね。日が暮れてしまいそう」
 唇を尖らせて鍋から離れるフォル。今度は手近に設置されていた、厨房の規模の割には一般的な大きさの冷蔵庫を開いた。
「うわぁ!」
「何かあったんですか?」
「これよこれ!ちょっと見てみなさい!!」
 袖を引っ張られ、強引に中身を見せられた。
「どう?」
「いや、どうって」
 中にあるのは色とりどりの食材、飲み物、調味料。
 上から下まで3回の往復点検を行い、僕が出した結論は
「どこからどう見てもただの冷蔵庫ですが」
「何言ってんの!この食べ物の山を見て何も思わないの!?」
「お菓子が無い時点で僕には興味ありませんよ」
「だったらこれを見てみなさい!」
 冷蔵庫の中から取り出されたのは……肉?
「これがどうかしたんですか」
「分からないの?これは伝説の高級食材と言われた黒毛中陸牛肉よ!」
 確かに聞いたことがある。中央大陸で厳選に厳選を重ねられた黒毛牛の肉は、大陸広しといえど最高の逸品らしい。
「それにこっちは太陽王国の由緒正しい血統付きの鶏が産み落とした黄陽卵!そしてこのパッケージは王族が愛飲しているとされる月公国産の最高級牛乳じゃない!こ、これだけでも……」
 少々危ない目付きでボトルに手を伸ばすフォル……だが。
「フォル、目を輝かせてるところ悪いですが」
「何よ。分量はたっぷりあるみたいだし、1杯ぐらいなら貴方にも分けてあげても良いわよ」
「そもそもそれは貴女の物ではない筈ですが、それすらもともかく」
 どうせなので雰囲気を出すためにゆっくりと右手を上げ、僕は宣告する。
「当然の事ですが、この館の主人は何年も前に他界しており、それに伴い内部の手入れもされていないでしょう」
「それが何よ」
「従って、その牛乳は何年も前に製造されたものであり、有り体に言ってしまえば」
 ここで言葉を切って、少しだけ間を作る。演出効果というヤツです。
 そして絶妙なタイミングで最後の結論、

「腐っています」

「……」
 僕の完全論破に何も言い返せないのか、ボトルを手に持ちながら冷凍されたように固まるフォル。全く、こんなのが僕の同業者として集められた1人とは……ん?
「これは?」
 フォルの所為で先程から中身しか見ていなかったが、よく見ると冷蔵庫の上には小さな青い箱が置いてある。
 丁度、手紙ぐらいなら入りそうな大きさだ。
「……ふむ」
 「で、でもこの館全体に保存魔法がかかっていたし」等と1人危険そうな事を呟いているフォルを無視し、僕は箱に手を伸ばす。
 慎重に手元まで下ろして中身を開けてみると、果たしてそこには1通の便箋が納められていた。どうやら当たりの様子だ。

青の箱の中の手紙

『2つの愛の間に生まれた幸せと別れ』
「おお いとしきキミよ 私はキミを諦めない
愛さえ忘れるならただ哀情に支配される前に
私も共に朽ち果ててしまいたい」

 相変わらず訳の分からない文面だが、とりあえずメモ帳を取り出してコピーしておく。ついでに何に入っていたのかも追記しておこう。
 そういえば、フォルはどこから便箋を手に入れたのか正確な場所を訊いていなかった。この手紙の文面と交換にして教えて貰おう。そう思って後ろを振り向いた時だった。

 ピーギュルギュルギュル。

 そうとしか表現できない音が静かな厨房に鳴り響いた。
 その後に残るのはただ静寂。
「な、何ですダニエル。お腹でも空いたのかしら?」
「いや、どう考えても今のはフォルの音では」
「五月蝿い。こういう時はレディを立てるもので」

 グギュルギュギュギュ。

「う」
「今、う、って」
「う、五月蝿……うぐぐぐ」
 お腹を抑えてうずくまるフォル。横に転がっているのはやはりというべきか、ブランド名の書かれた空のボトルだ。
「だから腐っていると言ったんですが。というかボトル丸々なんて腐っていなくともお腹を壊しそうなものです」
「これがどれだけ貴重な物だと」

 ギュルギュルピー。

「も、もう駄目……おトイレっ!」
 いきなり立ち上がったかと思えば、見た目からは想像できない速度で出入口へと。
「勝手に別の場所へ行ったりしないでよ!」
 勝手も何も最初から一緒に行くなんて約束はしていない。
 なんて反論をする暇も無く、フォルの長めの髪が廊下に吸い込まれていった。
 ……そちらからではトイレは逆方向だった気がするのだが。
「ま、いいでしょう」
 チョコレートを取り出そうとして、既に携帯している分は食べ切ってしまったことを思い出す。まだしばらくは大丈夫だが、このままでは糖分禁断症状が発病してしまう。どこからか確保しなければ……さっきの冷蔵庫には甘い物はあるんだろうか?いやあってもフォルみたいな目にはあいたくないので食べないが……多分。
 このままここにいると、物色した揚句に自爆しそうなのでさっさと退出。勿論フォルを待つ気はない。探偵というのは基本的に1人で仕事するものですから。
「さて、と」
 たまには僕1人でも出来るという所を見せておかなければ。探索中に他の3人と接触する可能性も高いが、まぁフォルと一緒にいるよりはマシだろう。残る手紙は2通。まずは、それらを探し出してからだ。



~~~~~~~~~~

やっぱり起こしたキャラ崩壊。名前&設定が少ないキャラほど変人にしたくなるのは俺だけなんですかねぇ。だからってフォルが腹壊す必要は無かった気がせんでもない。

目標としては第7話で終わらせたい所です。ほら『虹の館』ですし。まぁ俺だしお察し。

では、また次回~。
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No title

ギュルギュルピー↑


今回はこの音が全て持っていったな・・・

Re: No title

>某R氏
女性だから精一杯伏せたつもりが逆効果だったよ!文章って怖いね!!
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