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クロス・ストーリー 第4話 ―新たな戦い

「……」
 僕は何を見ているんだろう。
「「「……」」」
 ナイフを放棄し、フォークを片手に睨み合う3人の姿。親の敵とばかりに火花を散らしている。
 なんだろう。この疎外感。
 先程のミストの言葉が思い出される。



「ま、急いで分かるもんでもない。焦らず行こうや」
 そう言い残し、彼は扉の奥に引っ込んだ。
 ミナという彼、ヴルドと同棲している(大の男が血縁じゃない少女と暮らしているって何があったらそうなるのだろうか)少女に訊いてみると、どうやら夕食の用意をしているらしい。
 僕も一人暮らし(ミストが乱入して来る事も多いが)も長いので自炊は出来る。1人で4人分作るのは大変だろうと手伝いを申し出たのだがミナに強く止められた。
 彼女いわく
「料理中に台所に入ったらヴルドに殺されちゃうよ」
 体を震わせながら教えてくれた。
 ……たまにそういう頑固気質な仕事人がいるが、幾らなんでも殺しまではしないと思う。
 彼女の反応からして一度侵入を試みたのだろうが、どのような地獄を目にしたのだろう。うっすら涙まで浮かんでいるが。
 しかし、そうなると今日来たばかりの僕にはやる事が無い。
 既に荷物は部屋に置いてきたし、治安が悪い街を夜中に出歩くほど胆力がある訳でも無い。
 ならば、これから仕事を共にする少女と友好を深めるのも悪くない。
「ミナさんは勇者を目指していると言っていましたが、何故勇者を目指すんですか?」
「だってカッコいいもん!」
「成程」
 馬鹿馬鹿しく聞こえるが、一番分かりやすい。
 ややこしい事件よりスパッと一本道が通った事件の方が僕は好きだ。何が正義で何が悪かすぐに見分けられるから。
「勇者っていうのはひたすら強くて、ひたすら正義で、ひたすらカッコいいんだよ!」
 手をバタバタさせて興奮しながら熱く語るミナ。
 少なくともこの娘には我々に敵意は欠片も持っていないのだろう。
「よく分かりました。そういえばヴルドさんも勇者を目指していたとか言っていましたが、どういう事なんですか?」
「え?うーん……」
 ミナはちらりと後ろの扉……現在ヴルドが篭っている台所への扉を見やる。
「ま、いいか。名探偵なら言わなくても自分で見つけだしそうだし」
「名探偵と名乗った記憶はないのですが」
「じゃあ今から名探偵って事で!こんな所まで呼ばれちゃうなんて名探偵以外ありえないし!!」
「……」
 どうやら派手な役職が好きらしい。
 勇者になりたいというのも派手で目立つからじゃないだろうか。まぁ、大体の人間はそれが目的なのだが。
「それは私も興味あるわね」
 突然、横から僕の腕に絡み付いてきた手。
 そんな事をするのはこの場で、いやこの世でただ一人。
「ミスト、どこに行ってたんですか?」
「んー、お宿探検?意外と家中みんな綺麗だったわ。快適に過ごせそう。掃除してるのはミナちゃんだったわね?やっぱりしっかりしてるわねぇ」
「あ、ありがとうございます。初めてここに来た時は大変だったんですよ」
 いきなり現れたミストに驚いていたが、褒められてはにかむ。
 それにしても彼女は僕とミストに対する口調が違うような……
「んっとね。ヴルドも元々、生まれは違う所だったんだって。あ、『も』って言ったのは私も別の所からここに来た口だから……勇者になる為に世界放浪の旅をしてたの。って私の話じゃなかったね。で、ヴルドは子供の頃から腕っ節が強くて、色んな勇者の話を聞いていたから『俺が勇者になってやるぜー』って故郷を飛び出したの。それで色んな所を訪れながらモンスター退治したり、強盗団を壊滅させたりしてたんだけど、なんでもその頃から生意気だったから人に疎まれる事もあったんだ。そしてある時、とある街で住民総出で襲われたんだって。しっかり依頼はこなしたんだけど派手に暴れたのが原因だったらしいよ。それでどうにかこうにかこの街に流れ着いて住み着いた。ついでに性格もとっても捻くれちゃったみたい」
 長々と説明してくれた。
 つまり、自分の力に酔った揚句に暴走したしっぺ返しを喰らったんだろう、彼は。
「落ちこぼれの勇者ってとこね」
「お、ミストさん上手い事言いますね」
 はしゃぐ女性二人。
 ミナの方は人懐っこい性格らしい。今回のような仕事では助かる。
 が、もう一人の方は……
「おい、出来たぞ。とっとと戦闘準備しろ」
 いつの間にかミナの後ろにヴルドが立っていた。
 その両手には大皿が一つずつ、もわもわと湯気を上げている。
「おおっ!今日も美味しそう!!」
 ミナの言う通り、かなり美味しそうに見える。
 成程、ヴルドが料理を担当している理由はこれだったのか。
「さっさとどけ。テーブルに置けないだろうが。ついでに食器を出せ」
「あいあいさー!」
 どこぞの下っ端のような掛け声で動き出すミナ。あっという間に夕食の準備が出来ていた。
 ……のは、いいのだが。
「「「……」」」
 沈黙。
 四人前では済まない量の食事を前にフォークを構えた三人。
 その顔は真剣そのものである。
 机に着いたと思ったらいきなりこのポーズで停止したのである。
 さっぱり訳が分からない。
「あの」
「静かにしないと殺す」
 ヴルドやミストならともかく、そのセリフをミナから聞くとは思わなかった。
 僕が絶句していると隣に座ったミストが静かに呟く。

「分かってないわね。ここは既に戦場よ」

「……は?」
 その意味を聞き出そうとする前に。
 戦いは、始まった。



 そこから先の事はあまり覚えていない。
 というか物事の進行が早過ぎて記憶に残っていない。
 ただ銀色の光が煌めく度に肉が、ポテトが、サラダが消えていった。
 僕も必死で確保に務めようとしたが、尋常じゃない三人の動きには到底及ばなかった。
 何故ミストはこの二人に着いて行けるんだろう。相変わらずなんでも出来る謎の女性である。
 だが、何にでも終わりはある。この戦いにも終幕が近づいていた。
「「「……」」」
 最後に残ったのは焼肉一つ。
 そして、最初に見た光景……ナイフを放棄してフォークだけで睨み合う三人の図に戻った訳だ。
 全く、とんだ戦いである。
 結局僕は殆ど食べられなかった。あそこに正面切って突っ込んでいく勇気も無謀さもなかったのだが。
「「「……」」」
 三人は今だに停止したままだ。
 動いたら負けというヤツなのだろう、多分。
 張り詰めた空気が僕にすら動く事を許さない。
 ……何時になったら終わるんだろう、これ。
 最初から戦闘を放棄し、フォークを皿の上に置いている僕としては、とにかく早く終わらせて欲しい。その一点だけだった。
「やぁあぁあぁあぁ!!」
 遂に緊張した空気に焦れたのか、ミナが気合いの声と共にフォークを振り下ろす。
「させるかぁ!!」
 その動きに反応したヴルドは自分のフォークでミナのフォークを掬い上げるようにかち上げ、ミナのフォークを吹っ飛ばしてしまう。遅れて床にフォークが刺さる。
「あぁっ!」
「貰った!」
 ズン!と音がしそうな勢いでフォークが振り下ろされる。
 しかして、その先にいたのは、
「今回の勝負は私の勝ちね」
 やっぱりと言うか何と言うか、ミストだった。
「んがぁ!すっかりミストがいる事を忘れていた!!」
「フフン。全く同じ戦いというのは二つとして無いのよ」
 頭を抱えて悔しがるヴルドに、肉を頬張りながら勝者の能弁を垂れるミスト。
 何だろう、これ。
「はぁ……」
 軽く溜め息をつくと、それが聞こえたのかミストがこっちを向き、
「大体、ダニエルは食べなさ過ぎよ。もっとがっついて来なさい」
 なんて無茶を言い出した。
「あの空気に付いて行ける訳が無いでしょう」
「あら?私は付いて行ったわよ?」
「それは貴女が……ハァ」
 キョトンとしたミストの表情を見た僕は、溜め息と共にこの仕事に一抹の不安感を覚えるのだった。



~~~~~~~~~~

次回『クロス・ストーリー 第五話 ―捜索と散策と』

「何も無いと思う所に真実はあるものです」



この話は一体どこへ向かっているのやら。
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