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クロス・ストーリー 第ニ話 ―もうニ人は

 青い空。青い海。
 白い雲。白い船。
 そして……
「……うぷ」
 青い僕の顔。
 酔い止めは毎回使っているというのに、一度たりとも効いたためしが無いのは何故だろう。色んな種類の薬を試しているし、体に楽な姿勢をとったり、『酔いに効くツボ』なんていうインチキ臭いものまで試したが、どれも効く気配がない。
 船酔いが止めれないのなら船に乗らなければいい。現に今回の目的地は迂回ルートをとれば船に乗る必要は無かったのだ。
 なのに、何故船に乗ったかと言えば
「ほらほら!海が綺麗よ~」
 はしゃぐ今回の事件の仲間、ミストの希望である。
 青いフードにスリットで大胆に足を露出させた服。見た目は占い師だが、その実態もまた占い師である。とはいえ、僕は彼女の占いを見たことがないのだけれど。
 彼女は昔から相も変わらずの強引さであり、
「一々時間をかけてるよりパッと行ってパッと帰ってくるべきよ!時は金なり!!」
 などと言って渋る僕を無理矢理海の上に連れて来たのだった。
 正直、かなり迷惑なのだが
「こんな海で泳いでみたいものね」
と目を輝かせるミストの姿が見れたと思えば悪くはないかも知れな
「グッ!?」
 猛烈な吐き気に襲われる。
 やっぱり無理。これだけは耐えられない。
 この際、船から飛び降りて泳いだ方がいくらか楽なんじゃないだろうか。
「ダニエル、大丈夫?」
 僕の名を呼び、心配そうに覗き込んでくる。
 そんなに心配するんなら最初から乗せないで欲しいのだが、今更言った所でどうしようもない。
 せめてミストの前で吐く訳にはいかない。親しいとはいえ女性の前で不様な姿は晒すべきでは無いだろう。
「どうにか……大丈夫……です」
 我ながら声に気力が無いが、こうやって気を張っていないとすぐに折れてしまう。
 到着は後少しだと聞いたのだが、果たしてそこまで持つかどうか。
「顔色悪いわね。やっぱり、船酔い治らないの?」
「それは……まぁ」
「前にも思ってたけど大変ね~」
 そういえば、ミストと船に乗ったこともあった。
 あの時は……そう、僕が敗北した事件だ。
 そして、今回の事件はそのリベンジでもある。



――――――――――

――「ダニエルさん、『月光』を覚えていますか?」

 ある日、魔法王国のビルの二階にある僕の探偵事務所に尋ねてきた人が放ったセリフだ。
 忘れる筈が無い。
 それは宝刀であり、魔導具であり、僕が護るよう依頼された物。
 そして、奪われた物。
 全ては僕の所為だ。
 依頼主は違うと言ったし、奪われたことを責めるどころか、死傷者が出なくて感謝までされたけど。
 それでも、僕の所為だと思う。
 そんな物を忘れる筈が無い。
「ええ。しかし、何故貴方がそれを?」
 質素なフード付きのコートを被っているが、白い髪が隠しきれていない。
 蒼い眼に微笑を湛えた人物。
 あの事件の時、こんな人には会っていない筈だ。
「まぁ、色々と因縁があったんです。あの力には」
 刀ではなく、力?
 確かに『月光』には魔力を蓄え、増幅する力があった筈だが、そこに因縁があるというのはどういう意味だろうか。
「僕の事より貴方の方が因縁は深そうですけどね。どうです?『月光』を取り戻したくありませんか?」
「それは」
 当然、取り戻したい。
 依頼主に持って返ってやりたい。
 なにより、僕自身の気が済まない。
「……出来、ますか」
「貴方の意思次第です。そう、行くつもりならミストさんも連れて来て下さい」
「ミストを?」
 彼女は僕が遠出となると拒否しても無理矢理ついて来るのだが……依頼主から同行を要請されるとは。
 益々不思議な人だ。しかし、このチャンスを逃す気はない。
「やります。命に代えようと」
「命の無駄遣いは止めて下さい。少し前に知り合いが無茶をしたことがあるので」
「そうですか。ですが、絶対に成し遂げてみせます」
「頼もしいです」
 フフッと依頼主が笑う。
「その話、全部聞かせて貰ったわよ!」
 突然、事務所の扉が蹴り開かれる。
 そこに片足を上げて立っていたのは、毎日見ている女性の姿。
「ミスト、部屋に入るのは良いですが入る前にノックして、かつ手で開けてください。こちらは商談中なんですから」
「良いじゃない。どうせ私も行くんだし」
 今回は同行が決定しているが、本当はついて来る必要が無い。その癖毎回盗み聞きしているのだから質が悪い。
「で、貴方が今回の依頼主さんよね」
 ズカズカと部屋に入り込み、かなりの至近距離で顔をジロジロ見ている。
 いくらなんでも初対面の人に対して失礼だと思い、注意しようとしたのだが
「ふーん……」
 案外あっさり引いた。
 それでも注意しない訳には行かないのだが。
「ミスト、少しこちらへ」
 手招きでミストを呼び、耳元で怒気を込めて囁く。
「何やってるんですか。依頼主に失礼過ぎますよ」
「ダニエル、あの人は何者?」
「何の話で」
「あの人、魔力が全く感じられないんだけど。並の人間以下よ」
「別に依頼と関係無いじゃないですか」
「むぅ」
 納得出来ない、といった風に下がるミスト。
 仕事の情報を持ってくるのに魔力が何の関係があるのだろう?
「さて、まだ話すことがあるのですが宜しいですか?」
「良いわ。とっとと話しなさい」
 ミストの言葉遣いもかなり悪いが、依頼主は気にした風でもなく続ける。
「お二人には傭兵王国領のある街に向かって貰います。そこで、二人の仕事屋の家で共同の生活をして貰います」
「待って。お金ならたっぷりとあるわ。ホテルで泊まっちゃ駄目なの?」
「はい。その条件も含めての仕事です」
「ふぅん……」
 妙な条件だ。住む所を指定するなんて……まるで監視するかのようだ。
 もしかして、さっきのミストの行動は何かの確認だったのか?
「勿論、そこの二人と貴方達の合計四人で仕事に当たって貰います。仲良くして下さい」
「分かりました」
 何にせよ、既に断る気は全くない。
 このチャンス、逃してなるものか。
「注意事項はそれだけです。ここにその街を示した地図がありますのでご活用下さい。では、失礼します」
 紙を置いて立ち上がる依頼主。
「送って行きましょうか?」
「いえ。大丈夫ですよ」
 そして開かれたままの扉に手を掛け、
「宜しくお願いしますね」
 扉を閉めた。
 と、同時にミストが一気に走り出した。
「待ちなさいっ!」
 バカン!と今度は扉を殴り開ける。
 しかし、外を少し確認するとすぐに閉めて戻って来た。
「ミスト、どうしたんですか?」
「あの依頼主、怪し過ぎない?」
「どこが?」
「扉を開けたらもういなかったのよ」
「転移魔法が得意なのでは」
「魔力が無いじゃない」
「……そうでしたね」
 魔力が無い者に魔法は扱えない。当然の常識である。
「ならば、魔導具では?」
「貴方も知ってるでしょ。固定された場所と場所への転移ならともかく、座標設定していない転移は魔導具では無理よ。転移魔法は簡易化が進んでいるとはいえ、ちゃんと準備しておかないと事故を起こすだけ。魔力が無い人間に扱える物でも無いわ」
 そう、分かっている。
 『帰還』のグリモアが一般的になったのは、予め転移場所を設定して置くことで集中力と魔力の消費を抑えた為だ。
 何も無い所から何も無い所へイメージだけで飛ぶのは魔導具の助けを借りてもかなりの難易度を誇り、成功してもしばらくは魔力が枯渇してしまう。
 それを商談前と後の二回。出来る筈が無い。
「しかもあの人。階段を使ってないわよ」
「何故分かるんですか?」
「今日はずっと一階にいたけど誰も上って来なかったからよ。転移魔法を使ったら、いくらビルの二階でも私ほどの魔法使いなら気付くわ」
 成程……ん?
「では何故、来客に気付いていないのにミストは盗み聞きが出来たんです?」
「盗み聞きとは言葉が悪いわね。単にこの部屋に仕掛けた機械から会話をキャッチしただけよ」
「それは盗聴です」
「ここは私のビルだし、相手がダニエルなら問題無いわ」
 彼女はプライバシーという言葉を知らないのだろうか。
「とにかく、階段を使わずに二階に行き、その後物凄いスピードでここからいなくなった。常識的に考えると魔法の筈だけど、依頼主から魔法は全く感じられなかった……不可解なことしか無いわね」
 油断、しないでね。
 ミストが真面目な表情で言うのを見て、僕は気を引き締めるのだった――



――――――――――

「ダニエル、急に静かになったけど無事?」
「え?あ、はい」
 どうやら、依頼を思い出していて周りが見えていなかったようだ。
 さて、現在地は……
「オェエェエェエェ!」
「わぁあぁあぁ!?ちょっと、いきなり吐いちゃった!?」
 海に向かって胃の中身を逆流させる。
 なんとも気分が悪い。
 回想に集中しすぎて吐き気を堪えるのを忘れていた。
「う、うぷっ」
「あーもう、ホントに油断しちゃ駄目でしょうが!」
 背中を摩ってくれるミスト。
 心遣いは有り難いが、あまり見ないで欲しい……
「全く、もうすぐ到着なんだからもっとしっかりしてよ!名探偵!!」
 どうにか視線だけ上げると、確かに港に近づいていた。
 ここから更に陸路に時間を掛け、目的地へ。
 因縁を断ち切りに、僕達は向かう。



~~~~~~~~~~

 次回『クロス・ストーリー 第三話 ―集結』

「俺はロリコンじゃねぇつってんだろうがぁ!!」



 最後、吐きながら真面目なことを考えてるダニエルでなんか笑った。
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